気管支喘息、アレルギー疾患

 気管支喘息は、慢性呼吸器疾患の中でも有病率の高い疾患であり、継続して治療を受けている患者さんの数は約120万人と考えられています。気管支喘息の症状として咳、痰、息苦しさ、胸のつかえなどがありますが、これらは、気道炎症による気管支平滑筋の収縮や気道壁の肥厚、分泌物の付着が気道で生じているためと考えられています。

診断について
 喘息の診断について右のような基準がガイドラインで示されています。当科では、3の気道過敏性を確認するためのアストグラフや、4の気道炎症を確認するための呼気一酸化窒素の測定が可能です。

治療について
 約30年前までは、気管支拡張剤を定期的に使用して気道閉塞を防ぐことが、治療の基本と考えられてきました。しかしながら、喘息発作のため、点滴や内服でのステロイド剤が必要な患者さんは減少しませんでした。気道閉塞の原因として気道の慢性炎症の重要性が明らかとなり、この気道炎症をターゲットにした吸入ステロイド剤による治療が行われるようになりました。この結果、日本において喘息で亡くなる患者さんの数は、1990年代初頭の年間6,000人程度から2016年の1,454人と減少し、また、喘息発作のため入院したり、外来受診し点滴治療を受けたりする患者さんも激減しており、当科でも喘息発作のため入院する患者さんは、ほぼいなくなりました。

 一方、吸入ステロイド剤に各種気管支拡張剤等を使用しても、十分なコントロールが得られない重症喘息患者に対して、ステロイド剤と異なった作用機序により気道炎症の制御に効果のある分子標的治療薬(オマリズマブ、メポリズマブ、ベンラリズマブ、デュピルマブ)が使用できるようになっています。気管支ファイバーを利用し、気道に熱を加えることで、肥厚した気管支平滑筋の縮小等を目的とした気管支熱形成術という治療も開発されています。当科では、分子標的治療薬や気管支熱形成術による治療が可能となっています。
気管支喘息の治療ステップ

気管支喘息の病態について
 気道炎症については、1.ダニなどの環境アレルゲンに対するアレルギーが確認でき、リンパ球や好酸球の関連が強いタイプ。2.環境アレルゲンに対するアレルギーは確認できないが、気道の好酸球浸潤があり2型自然リンパ球が関与していると考えられるタイプ。3.炎症細胞として好中球が主体であり、Th17細胞や3型自然リンパ球の関与が考えられるタイプ。4.好酸球や好中球等の炎症細胞の関連が乏しいタイプなどがあると考えられています。分子標的治療薬などが利用できるようになった背景には、以上のような気管支喘息の病態についての研究が進んだことがあります。理論上、3、4のタイプの喘息に対して吸入ステロイド剤の効果は限定的と考えられるため、新規治療薬の開発などの治療戦略の展開が望まれる状況は続いています。

行政との連携
 アレルギー疾患を有する国民が、その居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切なアレルギー疾患医療を受けることができ、アレルギー疾患に関し、適切な情報を入手することができることを基本理念に、平成26年6月に「アレルギー疾患対策基本法」が成立しました。各都道府県において診療の中核となるアレルギー疾患医療拠点病院の選定が進み、徳島県においては、平成31年1月に徳島大学病院が徳島県アレルギー疾患医療拠点病院に指定されています。従来、2月20日のアレルギー週間に徳島アレルギーフォーラムとして市民の方に向けた講演会の開催に尽力して参りましたが、2020年度より徳島県の行政と協力し、医療従事者に向けた講演会も実施しております。

 最新の診断、治療の診療に留まらず、行政と協力し患者さんやその家族のみならず、医療従事者の皆様への情報提供通じて、気管支喘息の診療をブラッシュアップするとともに、基礎・臨床研究を継続し、大学病院の特性を生かした高度先進医療を患者様に提供できるよう努力を続けていきます。
徳島大学大学院医歯薬学研究部呼吸器・膠原病内科学分野
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Tokushima University